王太子の揺るぎなき独占愛



 今回の立てこもり事件でできたらしい顎の傷は小さいが、まだまだ生々しい。
 どういう状況でこの傷ができたのかはわからないが、想像するだけで胸が痛む。
 無事に帰ってきてくれて、本当によかった。

 サヤは心の底からそう思い、安堵の息を吐いた。

「あ、あそこでイザベラや騎士たちが待ちくたびれてるな」

 レオンの言葉に視線を向ければ、出立の準備を整えたイザベラや騎士の姿があった。
 水を与えられたのか、馬も元気に動き回っている。
 レオンとサヤの姿に気づいた面々は、イザベラから状況を聞いているのだろう、意味ありげに笑顔を浮かべている。

「イザベラのやつ、よけいなことをペラペラ話したな」

 レオンは悔しげな声をあげた。
 すると、レオンの腕に抱かれているサヤが、ゆっくりと体を起こした。

「よけいなことではありません。とても大切なことです」

 にっこりと笑い、そして。

「大歓迎だと言われたので、早速」

 なんてことのない口調でつぶやいたかと思うと。
 レオンが考える間もなく唇を重ねた。


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