王太子の揺るぎなき独占愛
城下の医院を回ることの多いサヤを知る者は多い。
公爵家の娘、それも王家からの信頼が厚いルブラン家の娘であるにも関わらず気さくなサヤは誰からも好かれていた。
サヤが城下におりるときには数人の騎士が彼女を警護しているが、誰もがサヤに気安く声をかける。
子どもたちもサヤが大好きで、彼女を見かければ一目散に駆け寄り一緒に遊ぼうと誘ってくる。
そんな日々を何年も重ねるうちに、最初はかたぐるしく「サヤ様」と呼ばれていたのだが、今では「サヤちゃん」と友達のように呼ばれるようになった。
サヤは、親しみを込めてそう呼ばれることがうれしく、城下にくるのが楽しみで仕方がない。
本来、城下に来るのは当番制なのだが、面倒くさがって嫌がる者も多い。
サヤが代わって来ているうちに、サヤひとりが担当のようになってしまった。
そのことに、サヤはなんの不満もない。
「そう言えば、サヤちゃんがそろそろ結婚するって噂があるけど、本当なの?」
いよいよ眠ってしまったのか、目を閉じておとなしくしているマリアを抱きかかえたロザリーが思いついたように振り返った。
「最近、サヤちゃんと結婚したいっていう貴族様とか他国の王子様から陛下に手紙がいくつも届いてるって聞いたわよ?」
「え? いったい誰がそんなことを?」
ロザリーの言葉に、サヤは手にしていた薬袋を落としそうになった。
「食堂に来る王城の侍女たちがそんな話をよくしてるのよ。陛下宛ての書面って、まずは侍女が受け取って、執事さんに渡すんでしょ? 最近たくさんの国から手紙が来てるらしくてね。執事で一番偉い人が「やはりサヤ様は大人気なのですね」とかなんとか言ってたらしいわよ。それってサヤちゃんと結婚したいっていうお願いの手紙でしょ?」
探るように問いかけるロザリーに、サヤは何度か首を振った。