王太子の揺るぎなき独占愛
「私にはなにも知らされていなくて……。でも、そうなんだ、たくさんの手紙が……」
サヤは力なく笑顔を浮かべ、あふれる不安を隠した。
「ルブラン家の娘だから、陛下がお決めになった結婚を受け入れるしかないわよね」
サヤはどうってことのないように、軽い口調を心がけた。
城下でも自分の結婚の話が出ているとは思いもしなかったが、そこまで話が広がっているということは、やはり陛下はサヤの結婚についてなにかお考えなのだろう。
ルブラン家の女性のこれまでの結婚を思い出せば、新たに屋敷を構えて婿を迎えた女性の方が他国に嫁いだ女性よりも圧倒的に多い。
サヤもこのままファウル王国で新しい家庭を築き王家の森の管理を続ける可能性の方が高いのだが、やはり不安は募る。
「もしもサヤちゃんがよその国に行っちゃったら寂しくなるわ。私もマリアもそうだけど、サヤちゃんが大好きな人はたくさんいるからね」
ロザリーは大きなため息をひとつ吐き出した。
「ロザリーさん……」
「だけどそうだね。どんな結婚をするにしても、サヤちゃんが幸せになるように祈ってるからね。たとえよその国に行かされても、つらかったら逃げだしちゃえばいいんだよ。まさか実家に戻るわけにはいかないから、うちでかくまってあげる」
ロザリーはきっぱりそういうと、真面目な表情を浮かべた。
「冗談じゃないんだよ。サヤちゃんが大好きな人間は城下にたーくさんいるから。みんなで力を合わせて助けてあげる。いいね、忘れちゃだめだよ」
サヤと目を合わせ、力強く何度もうなずいたロザリーに、サヤは目の奥が熱くなる。
ロザリーがここまでサヤのことを思っていてくれたなんて、思いもよらなかった。