王太子の揺るぎなき独占愛




 サヤの頬にはまだ涙が残っているが、瞳には明るさが戻り始めていた。
 
 家族にも誰にも言えずにいた不安定な思いを、ロザリーがなんてことないように笑い飛ばしたおかげだ。

「サヤちゃんの立場は特別だから、私が知らない悩みも不安もあるんだろうね。だけどさ、どんなに幸せでもどれだけ悩んでいても、それがずーっと変わらず続くことはないんだよ。いつか変化するときがくるんだ。その変化を笑って乗り越えられるように、力を蓄えておかなきゃね。結婚したってしなくたって、今のままいられるわけないんだから」
 
 ロザリーはそう言うと、励ますようにサヤの背中を軽く叩いた。

「サヤちゃんのお母さんに聞いてごらん。変化を怖がってちゃ幸せになれないって言うはずだから。いつも男の子にいじめられて泣いてた気弱な女の子が、ルブラン家に嫁ぐなんてかなりの変化だよ」
「……そう、ですね」

 サヤは母カーラを思い出し、苦笑する。

「父を叱り飛ばす母しか知らないので、未だに信じられませんけど」
「そうだよねー。今じゃ家のことを取り仕切る厳しい奥様だもんね。でも、私にとっては昔と変わらず美しくて優しい、自慢の幼なじみさ」

 今でもカーラとの付き合いがあるロザリーは胸を張る。
 ルブラン家のダスティンに城下で見初められたカーラは、彼からの猛烈なアピールにほだされ、そしてカーラ自身もダスティンを愛するようになり、結婚を決意した。
 城下で有名な美女だったらしいが、その面影は今も健在だ。
 舞踏会に姿を現せば、男性たちがざわつき、女性たちからは鋭い視線を向けられる。
 
 サヤもカーラに似て美人だが、森に通うばかりで、舞踏会とも男性ともほぼ無縁だ。


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