王太子の揺るぎなき独占愛
食べ物の力は絶大だ。
ロザリーのシチューはいつも通りのおいしさで、サヤの落ち込んだ心をすっと浮上させた。
新鮮な牛乳にほどよく溶け込んだチーズがポイントだとロザリーがこっそりとサヤに教えたが、温かいシチューは離宮で食べるごちそうにも負けていない。
サヤはシチューを食べながら、いずれ誰かと結婚し、レオンへの恋心を封印するときが来たら、このおいしいシチューを食べて強い自分に生まれ変わろうと思った。
決して涙を流さず、変化の中に幸せと希望を見つけられる強い自分になりたいと、切に思った。
普段はサヤの側に控えるだけの騎士たちも、ロザリーの「食べていきな」という言葉によって交代で席に着かされ、シチューを堪能した。
彼らもみなそのおいしさに心和ませた。
「母さん、これ、ロザリーさんから」
夜、屋敷に帰ったサヤは、居間で刺繍をしていたカーラに大きな紙袋を手渡した。
まだ温かさの残るそれには、焼きあがったばかりのパンがたくさん詰め込まれていて、部屋にはおいしそうなにおいが立ち込めた。
「まあ、ロザリーのパンね。これこれ、このクロワッサンが大好きなのよ」
中を見た途端、カーラがうれしそうな声を上げた。
早速クロワッサンを取り出し、口にする。
「んー、おいしい。子どものころはロザリーのお母さんが作ってくれてね、学校の帰りにいつもふたりで食べてたのよ。あのときの味と同じでうれしいわ」
「もう、話すか食べるかどっちかにしなきゃ、こぼれるわよ」
サヤは膝の上にポロポロとパンの欠片をこぼすカーラに苦笑した。
「ふふっ。だっておいしいんだもの。それに、これを食べると私が幸せだったころを思い出して強くなれるの。あ、もちろん今も幸せよ」
「幸せ……」