王太子の揺るぎなき独占愛
レオンはサヤとの婚約が正式に調ってからというもの、それまで見せることのなかったいくつもの感情や表情を見せ、人間らしく変化した。
レオンは子どものころから王太子としての役割を誠実に果たし、いずれ王位に就くことに疑問を持つこともなかった。
その運命から逃げることは許されないが、自分の人生になにも期待を持たず、欲というものからかけ離れた日々を過ごすレオンを、ラルフもシオンも心配していた。
ルブラン家から王妃を召し上げるという慣例にもなんの疑問を持たず、粛々と受け止めていたレオンだったが。
三か月ほど前のある日、隣国、ラスペード王国の第三王子とジュリアの結婚が決まった頃、突然レオンがラルフのもとにやってきた。
自分の感情を隠すことが得意なレオンだが、この時ばかりは紅潮した顔を露わに見せ、ラルフにあることを願い出た。
『一年以内に退位していただけないでしょうか?』
会議を終え、国王専用の執務室でホッと一息ついていたラルフは、レオンの言葉を聞いて椅子の背に体を預けたまま言葉を失った。
『それが無理なら……いつ陛下が退位をされたとしても、俺はサヤ以外の女性を王妃として迎えることはありません』
『は……? なにを突然言い出すんだ? サヤって、ダスティンの娘か? 森の天使ちゃん?』