王太子の揺るぎなき独占愛


 そんな枷も、女性たちの恋心をさらに膨らませ、レオンの人気は年を追うごとに高まっている。
 それは自分のものになることのない男性への憧れのようなもので、ルブラン家の女性を羨んだり、せめてレオンの側妃としてでも側にいたいという強い思いを持つ女性はいない。
 側妃を持つことが許されていないのだから当然なのだが。

 初恋の相手はレオン王太子。成長するにつれ、良い想い出に変わる儚い思い。
 いずれは自分の近くにいる男性と恋に落ち、結婚することがわかっている、そんな淡い思いだ。

「あれだけ格好いいんだもん。気持ちがぐらりときてもおかしくないよね」

 サヤも、レオンを初めて見た日からずっと、彼への恋心を抱えている。

 王族の健康を気づかい、王家の森の管理を任されているルブラン家の娘として生まれ、王族に近い場所で育ったサヤは、レオンと会う機会が何度かあった。
 そして、凛々しい姿と優しい笑顔に惹かれた。
 森で過ごすことを好み、社交界に顔を出すのが苦手なサヤが男性と知り合う機会は滅多になく、とびきり素敵なレオンに恋をするのは自然な流れ。
 そうはいってもサヤがレオンの正妃になる可能性は限りなく低く、彼女もそれを自覚している。
 ただ、いずれ素敵な思い出になるだろう初恋を、せめて今は楽しんでいたい。
 

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