王太子の揺るぎなき独占愛



サヤはリュンヌを見つめながら、くすりと笑った。

 レオンが王位に就くまで十年程度かかるだろうと言われている。
 そのとき、十代後半の女性が王妃として選ばれるはずだ。

「まあ、たとえ十歳若くても、ルブラン家でも末端の私には縁がないわよね」

 王妃に選ばれるのは、ルブラン家の本家に近い女性が多い。現在の王妃もルブラン家の本家出身の美女だ。
 本家からはかなり遠い縁にある分家に生まれたサヤが王妃に選ばれる可能性はほぼない。

「私は、森の中からレオン様をお守りしなきゃ。……でも、いつまでそれができるんだろう」

 サヤはそれまでの明るい表情を消した。
 昨夜、父親から聞かされたことを思い出し、ずんと気持ちは落ち込む。

「こうして逃げてもどうしようもないんだけど。わかってるんだけど……」

 サヤはどんどん重くなる心を振り払うように首を振り、リュンヌが順調に育っているのを確認した。
 そして、気持ちを切り替えるように大きく体を伸ばした。

「さ、森のために頑張らなきゃ」

 近くを流れる川のせせらぎにふと和み、再び森の奥へと歩を進めた。

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