王太子の揺るぎなき独占愛
『では、サヤとの結婚を認めてくださるのですか?』
『ふむ。そう言われてもなあ。まだ退位する予定はなかったんだが』
まだ四十八歳のラルフはすこぶる健康で、このさき十年は在位するだろうと思われていたが、そうなると、サヤの年齢からいって彼女がレオンの妃となるのは無理だろう。
世継ぎを生むことを考えて十代の女性を召し上げるという慣例は絶対的で、それを破るのは難しい。
貴族たちを説得しなければならず、いざ二十代後半のサヤが嫁いだとしても世継ぎのことばかりを心配された彼女が幸せになれるとは限らない。
レオンがどれほどの愛情をサヤに与えるかにもよるが、十年後、サヤが王妃として王家に嫁ぐ可能性は低い。
『それになあ、俺はダスティンを悲しませたくないんだ。ただでさえ自分の病弱な体のせいで肩身の狭い思いをしながら生きてきたというのに、大切な娘をわざわざ王家に嫁がせろとは……。王家の森の天使ちゃんと密かに呼ばれるほどかわいくて、ルブラン家の者の中で一番王家の森に詳しいとはいってもなあ。うーん。レオンにサヤを守り抜く覚悟があれば考えなくもないんだが』
ぶつぶつと言いながら悩むラルフに、レオンはすっと姿勢を正した。
『覚悟なら、決まっています。サヤを心から愛し、一生守ります。俺は、サヤ以外を王妃として迎えるつもりはありません』
落ち着き払っているが、強気な姿勢を崩さないレオンに、ラルフは困り果てた。