王太子の揺るぎなき独占愛




 しかし、王太子として問題なく成長し、なにを欲しがるでもなく淡々と公務をこなしてきただけのレオンがここまでひとりの女性をほしがっている。
 ラルフはレオンが初めて見せた激しい感情に驚きながらも、父親としてのよろこびを感じた。

 物心がついてから今日まで、レオンは王位に就くための教育を受けてきた。
 騎士団長を務め、見た目のよさだけでなく国王の資質があると国内外にも知らしめたが、レオン自身はとくになんの感慨も覚えていなかった。
 自分に与えられた道をただ進んできた。それだけなのだ。

 レオンの妹のジュリアは正反対の性格で、自分の人生は自分で切り開くとばかりに積極的に動き、国王夫妻が国外に視察に出るときには嬉々としてその一団に加わっていた。

 ほしいものはほしいと口にし、手に入れるまで精一杯の努力をする。
 理不尽なことがあれば異議を申し立て、徹底的に戦う。
 王女という恵まれた立場のおかげでできることも多いが、ジュリアはそのこともよく理解していた。自分の立場を利用して国民の生活が良くなればと、他国からやってきた使節団に対しても強気の交渉をおこない、交易上有利にことを進めることも多々あった。
 
 静かで誠実、確実な王太子。
 活動的で猛烈、強気な王女。

 極端に性格の違うふたりだったが、サヤとの結婚を望むレオンはまるでジュリアのように強気だった。


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