【完】そして、それが恋だと知った日。

”デート“
たったそれだけの言葉だけど。
その響きにドキドキして、心がさわさわした。
早く、土曜日になれっ。


スケジュール帳の土曜日には。
伊澄くんとデートって、ハートマーク付きで書いた。
その上に誰にもバレないように。
誰にも知られないように、ハート型のシールを貼った。


何着ていこうかな。
気合入り過ぎてなくて、可愛くて。
見学向きの服。
新しく買ったあの、パステルピンクのスニーカー履いていこう。
ピンク色みたいって言ってくれた。
伊澄くんの言葉。


あれ以来、買うものみんなピンク色で。
持ち物にピンク色が増えたんだよ。


やっぱりその日の夜は眠れなくて。
でも、前みたいなことにならなくていいように。
走って待ち合わせに行かなくてもいいように。
着る服も、履く靴も。
全部決めてしまってから、ベッドに入った。


どきどき、きらきら、ぱちぱち。
あの時の無邪気な笑顔の伊澄くんを思い浮かべながら。
私はそっと、目を閉じた。



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