君のことは一ミリたりとも【完】
しかしやはりビジネスホテルということあってツインといってもしっかりとベッドの端同士がくっついており、もはや1つのベッドと化していた。
「うわー、これもうダブルじゃん」
「……」
黙っている彼女に慌てて思考を巡らせる。
「アレだったらいいよ、俺一晩過ごせるところ他で探すし」
「いいわよ、別に。寝るだけでしょ」
「……まぁ、そうだよね。俺たち一つのベッドで夜を共にしたことあるし、今更だよね」
「誤解を招く言い方やめて」
はぁと荷物を置くと彼女は徐にスマホを取り出してこちらを横目で見た。
「ごめん、ちょっと電話するから」
「あ、うん」
俺に変な心配を掛けたくないのか、その場で誰かに電話を掛けた彼女。何となくその相手は予想できていた。
暫くして繋がった通話に亜紀さんは「お疲れ様です」と口にする。
「はい、今は友人の家です。今日は一日そこにお世話になるので……分かりました。ではまた明日」
1分も持たない会話を終えると亜紀さんは脱力気味に近くにあった簡易的な椅子に腰掛ける。
さっきまでいざこざがあったと思われる人物同士の会話にはどうもお思えない。