君のことは一ミリたりとも【完】
「生瀬なんて?」
「……取り敢えず明日もう一度話そうって。それから、謝られた」
「……」
彼女は椅子の上で体育座りをするとテーブルに置かれたスマホを見つめていた。
「謝られるようなことされたんだ?」
「っ……」
そう問い詰めるような言葉に顔を上げた彼女の顔を見て、嫌な想像ばかりが浮かんでしまう。
しかし亜紀さんは遣る瀬無さそうに首を横に振った。
「何もされてない、ただ少しショックだっただけ」
「……何があったか聞いてもいい? というか、ここまで来たんだし教えてくれないと俺がここにいる意味ないよね」
「初めから聞くつもりだったんでしょ」
亜紀さんはもう俺の性格を理解し切っているようだ。諦めたように肩を落とす彼女は生瀬と何があったのか、何を言われたのかをツラツラと語り始めた。
生瀬はやはり亜紀さんに対して未練を抱えていたこと、ヨリを戻すことを迫ったこと、俺との交際を生瀬へと当て付けだと思われていたこと。
彼女から語られたのはメディアを通してみる生瀬の印象を悪い方向へ変えるものばかりだった。
「つまり最初からこの出張は生瀬によって仕組まれていたわけだ。ホテルの部屋まで一緒にしちゃって、軽く人間不信になるね」
「生瀬さんのしたことは最低だと思う。でも人の気持ちを分からない人ではないと思うからもう何も言ってこないと思う」
「どこから来るのその自信」