君のことは一ミリたりとも【完】



自分でもまだあんなことを口にしただなんて信じられない。私いつから唐沢のことが好きだったんだろう。
高校の頃は顔を合わせるのも嫌で、ずっと毛嫌いしていた。向こうだって私を嫌っているのか伝わってきた。

だけどそれはただ意地を張っていただけで、気に障っていたのもそれだけ彼のことを意識していたということ。


『昔から、亜紀さんのこと意識してた』


じゃあ私も?


「(ない、それはない! あの頃は本当にアイツのこと大嫌いだった……はず)」


昔の私は今の自分を見てどう思うんだろう。
だけど確実の分かるのは、生瀬さんと不倫していた時の私よりかはマシだということだけだ。

仕事仕事、とパソコンと向き合う菅沼を他所目に、自分らしくもない乙女的思考に溜息をつかざる得なかった。




大阪出張から戻ってきた私は来月に行われる大規模のファッションショーの仕事が待っていた。今日はそのファッションショーが行われる会場の下見に菅沼と来ていた。

有名な二大女性向け雑誌がコラボして行われるというこのショーのチケットは完売済み。私が担当した中でも大規模なイベントに当たると知って任された時から責任は感じていた。菅沼がサポートについてくれているお陰で大分不安は解消されているが、これからメディアに向けた宣伝も行なっていくことを考えるとかなりの作業が必要となるだろう。


「でっけー会場。本当にここ満員になんのか?」

「モデルだけじゃなくて今人気の男性アイドルもゲストで呼ぶってなってるし、そのせいもあるかも」

「当日耳壊れそうだなー」


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