君のことは一ミリたりとも【完】



確かに唐沢の言ってることには説得力がある。もし彼氏と別れたことを告げたら嫌ってぐらい母に心配されるだろうし、彼女の勢いなら見合いなども勧めてきたりと面倒ごとが増えるのは目に見えていた。
だけど付き合ってまだ少ししか経っていない唐沢を実家に連れていくのにも抵抗がある。


「あ、もしもし。お母さん? この間のことなんだけど」

《亜紀、丁度いいところに! 唐沢くんって何か好きな食べ物ある?》

「え゛」

《お昼食べていくでしょ? 夕御飯も? お母さん張り切っちゃうから!》


翌日、改めて電話をかけた私の言葉に対して聞く耳を持っていない母はあれよあれよと勝手に話を進めていってしまう。スイッチの入った母を止められたいのは私が昔からよく知っていた。
そんな母と唐沢との間に板挟みにあって私は話を断りきれず、諦め半分で土曜日を迎えることになった。



来る土曜日、車で私のマンションまで迎えにきた唐沢は助手席に乗り込んだ私に対して爽やかな笑顔を向けた。


「おはよう、天気いいね。挨拶日和」

「顔のキラキラ閉まって」


無駄に朝から爽やかな笑顔を見せられ、私のフラストレーションはMAXになった。
そんな私に「まあまあ落ち着いて」と彼が宥めてくる。


「余計なこと言わないって約束するから」

「……」

「し、信用ないなぁ。亜紀さん、俺がそんなことするやつだと思ってるんだ……酷い……」

「な、なんで私が責められてるの」


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