君のことは一ミリたりとも【完】
この男、本当にどこまで私のことを把握しているつもりなんだろうか。得体の知れない恐怖に囚われながらも遂に実家の前にまで来てしまった。
私のイメージとは違う、真っ白なお城のような実家を見て、ハンドルに体重を掛けながら「はえー」と彼が感想を告げる。
「そっか、高校私立だもんな。そりゃ金持ちだわ」
「あの高校じゃ別に普通の方よ」
「それ、俺の前で言うとか鬼畜だなぁ」
そっか、確かな唐沢は……
「(特待生入学……)」
そんなことを優麻から耳に挟んだような覚えがある。奨学金で入学し、学年で一人、唯一学費を免除された特待生。その為唐沢は学科ごとに行われる定期試験で毎回上位に食い込んでいた。
思えばこの男、私よりも全然優れた男なんだった。
唐沢に対しての解像度が上がると共に、エンジンの音を聞きつけてか実家の玄関ドアが開く。
家から出てきた女性をして彼は「お母さん?」と軽く指差した。
「いらっしゃい、車駐車場に停めてくれていいからね」
「こんにちはー、じゃあお言葉に甘えて」
車内の窓越しに話すと家の駐車場に車を止めて二人して車内を出る。
玄関先に立つ母がずっとにこにこと微笑んでいるように見えるのが何とも不安に思えた。
「改めて唐沢爽太と言います。この度はお招き頂きありがとうございます」
「いえいえこちらこそ。どうぞゆっくりしていって」
「お邪魔します」