君のことは一ミリたりとも【完】
母の案内で玄関をくぐった唐沢についていこうとするとグイッと母親に腕を引っ張られる。
急になんだと顔をしかめると母は耳打ちをするように顔を近付けた。
「凄く格好いい子じゃないの。どうやって捕まえたの」
「捕まえたって……別に普通だから」
「電話先でもしっかりしてたけど、想像してたよりも爽やかな子で吃驚しちゃった」
「……」
確かに、唐沢は見た目だけなら女性からの受けはいい方だと思う。整った顔で清潔感があり、笑顔も幼く可愛らしい。
「(そう、顔だけならね)」
裏の顔まで知っている私は母親の言葉を聞いて呆れてものもいなくなった。
リビングには父親も待っていた。休日の日、普段ならソファーで一日中ゴロゴロしているはずだが今日はそのソファーに深く腰掛け、厳格そうに腕を前で組んでいる。
父は唐沢のことをチラ見すると深く息を吐き出す。
「君が唐沢くんかね。どうぞ座って」
「ありがとうございます。あ、これつまらないものですが」
「わぁ、美味しそうなケーキ。あとで切って出しましょうね」
唐沢の表向きの顔に騙されている母はもうすでに彼のことを気に入っているようだった。
両親と向き合うように座った私たちは二人の視線を真っ向から受けて嫌でも緊張感が増してくる。
「今日はお時間作っていただきありがとうございます。是非一度挨拶に向かいたいと思っていたところだったので嬉しいです」
「こちらこそ、亜紀ってばなかなか家に帰ってこないし彼氏も連れてこないから心配してて」