君のことは一ミリたりとも【完】
彼氏の前で責め立てられている私は立場がなくなり、その場で縮こまることしかできなくなった。
すると父は私たち二人の顔を見比べ、不思議そうに自分の顎を触る。
「ところで唐沢くんと亜紀はどこで知り合ったんだ?」
「ちょっと、そういうのいいってば」
「えー、お母さんも馴れ初め聞きたーい」
「聞きたいって……」
相当興奮しているのか、母の口調が幾分か若返っているような気がする。
馴れ初めを聞かれたって流れで付き合ったようなものだし、となんと返答すればいいか迷っていると見兼ねた唐沢が口を開く。
「実は僕、亜紀さんの高校の同級生なんですよ」
「え、それじゃあ優麻ちゃんとも?」
「はい、仲良してもらってて。その関係で亜紀さんにもお世話になってました」
お世話になってたって……
これまで浴びせられた暴言の数々を思い出し、頭が痛くなる。
しかし母は「そうなのー」と納得したように何度も頷き、
「そんな昔から亜紀のことを知ってもらえていたのね。この子少し天邪鬼なところがあるからそこが心配で」
「付き合い始めたのは卒業してからですが、亜紀さんの性格は理解してます。素直じゃない時もありますがそこがいいと思っています」
「ちょっと! そこまで言えって言ってないでしょ!」
ペラペラと戯言を話す唐沢の口を封じようと動くが軽く不自然な笑顔を浮かべた彼に軽く避けられてしまう。