君のことは一ミリたりとも【完】
「正直、まだそういうのは考えてないです。というのも僕も亜紀さんも仕事が好きなので、今はそれを優先したいと思っています」
「そう……なら私たちも待つけれど」
「でも、いつかはしたいと思ってます。一緒にいたいですし」
一緒にいたい、その言葉を聞いて浮かんだのは以前彼から言われた言葉だった。
『亜紀さんはこの先、ずっと俺と一緒にいる覚悟ある?』
私は、どうなんだろう。唐沢とこれからもずっと一緒にいたいんだろうか。
一緒にいたいと願ってしまえば彼に依存することは分かりきっている。生瀬さんの時のように、私の中に0か100しか唐沢に対する感情がなくなってしまう。
それでもいたいって、思えてしまったら……
「(なんで私、ずっと言い訳をしてるんだろう)」
誰に対する言い訳なんだろう。
実家を出たのは夕日が沈んだ頃だった。母は夕食を食べていけばいいのにと言っていたが長居するのも悪いと思って二人して外に出た。
「それじゃあ爽太くん、また遊びにきてね」
「はい、今日はありがとうございました」
いつしか名前呼びになっている母はいたく彼のことを気に入ってしまったようだ。父も最後には何故か握手を求めていたし。
隣で見ていて唐沢の話術は流石としか言えなくて、何を言えば私の両親が喜ぶのかを最初から把握しているかのようだった。