君のことは一ミリたりとも【完】
「(唐沢、って……)」
そういえば私の実家に着く前、彼が「家が近かった」と発言していたことを思い出した。
徐にエンジンを止めて車を降りた彼に続いて外に出ると、何も説明もないまま家の玄関を潜り抜けていく。
抵抗なく玄関扉を開いた唐沢は「じいちゃーん、ばあちゃーん」と玄関から続く廊下に向かって呼び掛ける。
暫くすると廊下の奥から足音が聞こえ、年老いた女性が姿を現した。
「爽太、帰ってきたとね」
「うん、ただいま。急でごめん」
「全然、いつでも帰ってきたらええ」
顔に皺を浮かべて微笑むその女性。やはり間違いない、ここは唐沢の実家なんだ。
確か唐沢は小学生の頃に親が離婚してついていった父親が事故で他界、それ以来父方の祖父母の元で暮らしてたって聞いてたけど。
彼の祖母だと思われる女性が「お爺さん」と呼ぶとまた廊下の奥から白髪の生えた男性が現れ、唐沢のことを見るなり嬉しそうに顔を綻ばせた。
「爽太か、顔を見せるのは久々だな」
「ここ最近仕事が立て込んでてあんまり帰ってこられなくてごめん。丁度近くに用事があったから寄ろうと思ってさ」
「そうか、仕事も無理しないようにな」
「じいちゃんもね」
家族水入らずの様子をただ茫然と眺めていると二人の視線が唐沢の後ろにいた私に向けられた。
「そちらの女性は?」
「っ……」