君のことは一ミリたりとも【完】
急に尋ねられて畏ると隣にいた唐沢がスッと私の肩を自分の方へと引き寄せた。
「二人とも、紹介するね。俺が今お付き合いしてる人、河田亜紀さん」
彼の言葉からは恋人を紹介することへの恥じらいなど一切感じられなかった。
唐沢から紹介を預かった私は二人に向かって深く頭を下げる。
「は、初めまして。河田亜紀と申します。唐沢……くんとは高校の時の同級生でして」
「そうだったの、突然綺麗な子を連れてきたからびっくりしたよ」
「亜紀さん、だったかな? うちに来てくれてありがとう」
二人の温かい言葉に頭を上げた私は「い、いえ」と畏ることしか出来なかった。
そんな私のことを横目に見ていた唐沢の表情は何処か嬉しげで、私自身も戸惑いつつも何故か照れるような気持ちが湧き上がってきていた。
ここにいるのもなんだからと家に上がった私たちは二人の案内で居間に腰を下ろす。
唐沢に連れられてのこのことやってきてしまったけど、なんで私唐沢の実家にお邪魔しているんだろう?
「亜紀さん、良かったらこれ食べて? うちで取れた柿で作った饅頭なんだけど」
「え、ありがとうございます」
「爽太も」
「子供のときよく食べたなー」
わーい、と浮かれた手つきでおばあさんが出した饅頭に手を伸ばした唐沢。それを真似るように饅頭を手に取り、口へと運ぶ。
薄い皮から溢れる甘さ控えめな餡子の中に濃厚な柿の果実が口の中に広がった。
「凄く美味しいです。柿のお饅頭なんて初めて食べました」
「ふふ、よかったら夕御飯もこのまま食べていって」
「え、」