君のことは一ミリたりとも【完】



二人は普段畑仕事をしているらしく、その日に取れた野菜で夕食をご馳走してくれた。
久々に帰ってきた孫の姿に浮かれているのか昔話は途切れることはなく、あっという間に夜は更けていってしまった。


「泊まっていつまでもいいのに」

「俺は良くても亜紀さんはよくないでしょ。今日も沢山移動したから疲れてるだろうし」


団欒後、玄関まで見送りに来てくれた二人に別れの挨拶を告げる。
流石に「泊まっていきな」と言われた時は驚いたが、唐沢が断ってくれて安心した。

突然連れてこられたけど、思っていたよりは有意義に過ごせたような気がする。


「また直ぐ顔見せにきんさい。いつでも待ってるから」

「ありがと、じいちゃん。二人も何があったらいつでも連絡して。仕事もちゃんと休み休みしながらな」

「ふふ、心配かけてごめんね」


家族水入らずの会話を隣で眺めていると、「亜紀さん」と名前を呼ばわれて背筋を伸ばす。


「爽太のこと、よろしくお願いします」


そう言ってくれた二人に、すっと出てきた言葉をそのまま口にする。


「はい」


今私は、二人から唐沢のことを託されたんだと気付いた。

二人の言葉を胸に車へ戻ると唐沢は「いやー、ごめんね」と、


「まさかあんなに引き止めてくるとは思わなくって」

「……」

「え、ごめん。なんか嫌だった?」



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