君のことは一ミリたりとも【完】
なんの返事もしない私に焦ったのか、慌ててそう尋ねてきた彼に首を横に振る。
「いきなり連れていかれた時は驚いたし正直呆れたけど、そんなに悪い時間じゃなかったから大丈夫」
「そっか、よかった。まあこんな機会じゃないと帰んないしな」
「帰ってあげなよ。心配してるって言ってた」
夜を走る車内は二人の声がポツポツと響いていた。
横目で運転する唐沢の顔を見つめるとずっと考えていたことが湧いてきそうになって留まった。
「昔は外で遊んだら絶対怪我して帰ってきてたんでしょ。料理してる時に聞いた」
「うわ、はずっ。ばあちゃんまだそういうの覚えてるんだ」
「アンタにも純朴な子供の頃があったんだって」
「俺をなんだと思ってんの?」
凄く、凄く大切に育てられてきたんだ。それがあの二人から感じられた。
そんな彼を私は一度危険な目に合わせてしまった。私の過去のせいで。
それを私は言えなかった。
「……」
認めたくなかったけれど、だけど唐沢を大事に思う気持ちはもうどうしようもないくらい私の中に溢れていて、それを本人に伝えなきゃいけないと思った。
「唐沢」
「ん?」
「……」