君のことは一ミリたりとも【完】
ワンテンポ遅れて聞こえた返事に「だから」と、
「アンタみたいな人間、誰とも上手くいきそうにないから。だから私がずっと面倒みてあげる」
「……」
唐沢が危険な目に遭っても私を守ってくれたように、私も彼のことを大切にする。
幸せにする。そう、彼の家族と約束したから私はやっと決心ができた。
この男の隣にいることへの覚悟が、出来た。
「……面倒見させてあげる、の間違いじゃなくて?」
「なんで私が唐沢に面倒みられてるの」
「冗談、でもありがとう。嬉しい」
「……」
真っ直ぐに前だけを見つめてハンドルを握っている唐沢の横顔に注目すると、微かに見える耳が真っ赤に染まっているのが見えて思わず吹き出して笑ってしまう。
「馬鹿、何照れてんの?」
「煩いなぁ、普通照れるでしょ。ていうか不意打ち狡くない?
「狡くない」
私に負けたからか珍しそうに悔しそうな表情を浮かべる彼を見て、ずっと胸でモヤモヤしていたものが晴れてスッキリした気分になった。
一つ大きなことを決心しただけでこんなにも気持ちが軽くなるんだと実感する。
今なら少しだけ想像出来る。いつか私がウェディングドレスを着ることになって、この人が私の隣に並ぶ姿を。
それはどれだけ先の話かは分からないけれど、きっとそんな日が来ても私は素直に受け入れられそうだ。