君のことは一ミリたりとも【完】
どういうこと、と尋ねると彼は戯けたように「分かんない」とあっけらかんと笑った。
「でも亜紀さんのことが気になり始めたのはその時ぐらいからだよ。それ以降は一回も会えてなかったけどさ」
「……」
「あの頃から、俺亜紀さんの泣き顔好きだったのかな」
いつしかそんなことを彼に言われてから、この男の前でだけは泣かないようにしようと思った。
前に泣いちゃったのは、ちょっと気が抜けてしまってきたからだけど。
「……ほんと、性格悪い」
「で、なんで泣いてたの?」
「……」
本当のことを言ってしまえば、自分がどれだけつまらない人間だったかを知られてしまいそうだ。
だけどこの人はそんな私のことを嫌悪せず、全てを受け入れてくれるんだろう。
当時のことを思い出すと、あの時の虚しさが胸に込み上げてくる。
「……何も、なかったの」
「そうじゃなくて、」
「本当に、何もなかったなって。私の高校時代」
赤信号で車が止まり、久しぶりに直接唐沢と目が合った。
「周りのみんな、友達と離れ離れになることを寂しがったり、高校の思い出を楽しそうに口にして懐かしんだり……でも私は、そういう青春って呼べること何も思い浮かばなくて」
「……」
「本当につまらない高校生活だったなって。友達を作らなかった私が悪いんだけど」