君のことは一ミリたりとも【完】
急に身体が脱力する。今まで背負ってきたものとかが目の前の男に呆れすぎて一緒に降りてしまった。
唐沢と話してると本当に全てのことが馬鹿馬鹿しくなる。彼の強引な言い分は何度聞いても理解は出来ない。
理解するのを諦めた。
「(寝よう……)」
今日は疲れた。とにかく今の私に必要なのは睡眠だ。
脱力したと共に私は睡魔に襲われて、気が付けば意識はもう夢の世界へと飛び立っていた。
次に起きたのは午前5時を過ぎた頃だった。
さっきとは桁違いに身体が軽い。短い間だったけどしっかりと身体を休ませたからだろうか。
唐沢は仕事の疲れからかまだ眠っているようだった。だけど多分そろそろ時間だ。これ以上延長するわけにもいかない。というかこの男といつまでもラブホになんかいたくない。
「(別に放っていってもいいけど……)」
寝顔が幼く、腹が立ったので頰を抓って彼を起こすことにした。
節約と言って同じタクシーに乗り込んできた唐沢に私は冷たい目を向ける。
「住んでるところ把握されるの嫌なんだけど」
「ひど、ストーカーなんてしませんよ。信用ないなぁ」
「信用なんか最初からあるわけないでしょ」
「一緒の部屋で一夜を共にした仲なのに」
「っ……」