君のことは一ミリたりとも【完】
「まぁ、とりあえず今は寝なよ。体調治さないと考えなきゃいけないことも考えられないでしょ」
「……」
確かにこれ以上具合を悪くして周りに迷惑をかけるわけにはいかない。
時間延長しとくからさと言う唐沢の言葉を信じて横になると布団の中に身体を滑り込ませた。
そういうホテルのベッドのくせに無駄にふわふわしてて腹が立つ。
と、
「ちょ、何でアンタも入ってくるわけ!?」
「俺も寝ようかなって。ほら、ベッド一つしかないしさー」
「ソファーで寝ればいいでしょ」
「命の恩人に冷たすぎない?」
何故か同じ布団で寝ようとする唐沢の侵入を必死に食い止める。
しかしそんな私を無視して布団の中に入り込んできた彼は「じゃあおやすみ」とパタリと喋るのをやめて目を閉じてしまった。
なんて強引な男。だけど私もソファーでだけは寝たくない。
今から帰るっていうのも大変だし。
「あ、寝てる間に手なんか出さないから安心してよ」
「前科があるんですけど」
私の方を見てそう言った彼は私に弄られたのが嬉しかったのか、「はは」と笑って再び目を閉じた。
なんなの、ドMなの? Sに見えたMなの?
「(なんか、もう何もどうでもよくなってきた……)」