君のことは一ミリたりとも【完】
しかしここでそれを肯定したら、生瀬さんに迷惑をかけてしまうだろう。
それか、奥さんが私たちの二人の関係に気が付いていたことを彼は知ってる?
どちらにしろ、結局私は罪を償うことになるだろう。私と生瀬さんが不倫していたのは事実なのだから。
「ここ最近様子が変だと思っていたが、大丈夫だ。千里のことは俺に任せろ」
「……」
「お前には被害がいかないように対処する。アイツは一度暴走を始めると止めるのに一苦労するからな」
まるで奥さんのことを子供のように話すんだなと思いながらも、それでいて大切にしていることも分かる。
それに関係が終わった後も私が彼女から責められないように色々と手を尽くしてくれているのだろう。
それほど責任感がある人なのに、どうして私と不倫なんかしたんだろうか。
それぐらい、私のことを特別に思ってくれていた?
ううん、やめようこの思考。またきっと、傷付くだけだ。
それに私はもう生瀬さんとは……
「大丈夫です、気にしてません。生瀬さんは奥さんと生まれてくるお子さんを大事にしてあげてください」
「……亜紀」
「……私を庇ったら、また疑われますよ」
もう生瀬さんに仕事以外のフォローはされたくない。
後ろを振り向かない菅沼はとっくに遠くのところまで歩いていってしまっている。早く追いつかないと付いていっていなかったことを怒り出すだろう。
行きましょう、と彼の方向へと足を進めようとする。
しかし咄嗟に掴まれてしまった左手に私は足を止めた。
私を引き止めた生瀬さんは真剣な表情で私の顔を覗き込む。