クールな社長の溺甘プロポーズ



『それならあの手を使わせてもらう。父さんは本気だからな、待ってろ!』

「へ?あの手って……」



お父さんはそう言い捨てると、私の話も聞かずに一方的に電話を切った。



一方的に話して、一方的に切って……相変わらず勢いで動く人だ。

しかも『あの手』ってなんだろう。

まぁ、お父さんのことだから、無理矢理お見合いでもさせようって魂胆かもしれない。絶対しないけど。

当分お父さんからの電話には出ないほうがいいかも。



電話一本になんだか疲れてしまい、はぁ、と深いため息をつくと、私はオフィスへ戻るべくトイレを出た。



お父さんの気持ちも、わかる。

会社の後継もそうだし、孫だって見たいだろう。

私だって、本当に諦めたいわけじゃない。



だけど、誰かと付き合って、結婚を考えたところでどうせまた上手くいかないだろう、という気持ちがまた湧いてきてしまうんだ。





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