クールな社長の溺甘プロポーズ
「おい、澤口。どうするんだ?」
「えっと……」
けれど、米田さんの声に冷静になって見れば、目の前にはすっかりまいってしまった様子の彼女の姿。
確か、仙台店は今日のようなイベント日が最も売上をとれるタイプ。
おまけに今月はあと少しで予算に届くかどうか、店長もここを逃すと痛いだろう。
……そこまで分かりきっていて、見捨てられない。
「今日一日、私が手伝います。接客ならできますし……あ、でもレジ操作は不安だから任せてもいいですか?」
「えっ、いいんですか?」
「店舗が困ってる時に助けるのも、本部の役目ですから」
ぱぁっと表情を明るくする彼女に、米田さんは心配そうに表情を曇らせる。
「澤口、大丈夫なのか?ここ夜まで入ったら最終の新幹線間に合わないぞ」
「はい、なので明日の朝イチで帰ります。どうせ私明日は休みなので。米田さんは予定通り午後で帰ってください」
そう、私は明日代休をとっている。仕事上は問題ないのだ。
はっきりとした私の返事に米田さんは納得したように頷く。
「悪いな。俺も残れるなら残りたいけど、明日は出勤だからな……。柳原には俺から報告しておくから」
「ありがとうございます」
米田さんはそう話を終え、「じゃあ」と上のフロアへ向かって行く。
上司への報告は米田さんに任せて……よし、じゃあ私は売り場に立つとしますか。