クールな社長の溺甘プロポーズ



「店長、今日は予算とりますよ!頑張りましょうね」

「は、はいっ、ありがとうございます!」



深々と礼をする彼女に笑うと、私はとりあえず荷物を置きにバックヤードへと向かう。



あ……大倉さんにも連絡、しておかなくちゃ。

……お店、折角予約してくれているのに。申し訳ないな。



それ以上に、彼の期待を裏切ることが心苦しい。



なんでも許してくれるような彼だけれど、今度ばかりは呆れられてしまうかもしれない。

こういうことばっかりしてるから、フラれるわけだ。



わかってる。自覚してる。

だけど、大切な仕事を投げ出したり、誰かを見捨てることはできない。

仕事へのプライドと心苦しさ、いろんな感情で胸の中がぐちゃぐちゃだ。



【ごめんなさい。
仙台店でトラブルがあり、夜まで仕事になりました。
なので、今夜の約束はキャンセルさせてください】



彼へメッセージを一通送り売り場に出ると、ちょうどビルは開店時間を迎え慌ただしく人が押し寄せた。



それから、その日は本当に大賑わいの一日だった。

店長とふたりまともに休憩にも入れず、接客、接客、ひたすら接客……。



売り場に長時間立つことも、こんなに人と話すことも久しぶりで、頬がひきつりそうになる。

けれど、自分たちの商品が直接売れることに確かなやりがいを感じられる。



だけどそれと同時に、今彼はどんな表情をしているか想像して怖くなる。

呆れてるかな。

お父さんからの話を受けたこと、後悔してるかも。



やっぱり、私には恋愛と仕事の両立なんて無理なんだ。

一度は希望に湧いた心が、ふたたび沈んでしまう。





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