クールな社長の溺甘プロポーズ



「おはようございます、米田さん」



彼、米田龍二さんは私より三つ年上の31歳。

柳原チーフと同期入社で、同じグループのメンズブランド【JUST LIKE THIS】でチーフを務める先輩だ。



ややタレ目がちな二重と通った鼻筋、高い身長という見た目から、社内でも一位・二位を争うイケメン。

それにも関わらず独身で彼女なしということから、独身女性たちの最後の希望と言われている。



お互いに店舗が同じショッピングモールに入っていることも多いので一緒に店舗巡回に行くことも度々ある。

『柳原はキツいから補佐役は大変だろ』となにかと気にかけてくれて頼もしい。

ブランドの違いはあれど親しい先輩だ。



ふたり一緒にエレベーターに乗ると、オフィスのある11階のボタンを押しながら米田さんは話す。



「夏物クリアランスセールのポスター、出来上がったやつ見たか?」

「あ、まだ見てないです。デスク行ったら確認します」

「マリンカラーで華やかさがあって、なかなかよかったぞ」



ふたりきりのエレベーターの中、そんな他愛のない話の後で米田さんは「ところで」とニヤリと笑う。



「聞いたぞ、澤口。昨日イケメンに公衆面前プロポーズされたんだって?」

「えっ!?」



いつの間にそんな噂に!?

今さっき出勤してきた米田さんが知っているということは、噂は昨夜のうちに社内中をまわってしまったのだと察する。


あんな目立つところでプロポーズなんてされたら、そりゃあ噂にもなるだろう。


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