クールな社長の溺甘プロポーズ
「ついこの前まで柳原の後をついていくので精いっぱいだったあの澤口もついに結婚かー。よし、披露宴でのスピーチは任せとけ」
「結構です。ていうか、しませんから」
「へ?そうなの?」
本気で信じているのだろう。キョトンとする米田さんに、睨みをきかせつつ否定すると、ちょうどエレベーターがポンと音を立て11階にとまった。
社内の人にそんな噂が立っているなんて……最悪だ。
これもあんなところでプロポーズなんてした大倉さんのせい!
腹立たしさからズカズカとエレベーターを降り、私は自分のオフィスへと向かった。
が、オフィスのドアを開けたその瞬間。
「澤口!結婚おめでとー!!」
大きな声とともに、パンパンッ!とクラッカーが鳴る。
そして目の前には大きな花束が差し出された。
こ、これは……。
見れば目の前には、満面の笑みで私を迎える同じチームの社員たち。
さらに他のチームの子たちや普段違うフロアにいる経理部や総務部の人たちまで集まっている。
「へ……?あ、あの?」
これは一体どういうこと?
状況に驚く私に、皆は『サプライズ大成功!』というように、わっと取り囲んだ。
「いやぁ、会社でサプライズプロポーズなんて彼氏さんやりますね!」
「ていうかあんなイケメンな彼氏がいたなんて知らなかったよ!もう!それならそうと言ってよ〜!」
昨日の話をすっかり信じ込んでいるようで、皆はわいわいと盛り上がる。