クールな社長の溺甘プロポーズ
「でも私、品川にこんなお店があるなんて知らなかった。大倉さんよく知ってたね」
「俺も今日初めて知った。探してみるものだな」
彼がなにげなく言ったそのひと言が少し気になった。
「って……わざわざ探したの?」
「そりゃあな。洒落た店なんて知らないから、あらゆるツテと検索をフル活用した」
ということは、人に聞いたりネットで検索をかけたりした、ということ?
その冷静な雰囲気から、なんでも知り尽くしていてスマートにこなす、なんてイメージだっただけに少し意外だ。
案外、普通の人なんだと安心してしまい、つい「クス」と笑ってしまった。
そんな私を見て、大倉さんは目を丸くする。
「そんなふうに笑えるんだな」
彼も私の反応が意外だったのだろう。少し驚いた様子で言う。
「悪かったわね。いつもツンケンした態度ばっかりで」
「別に悪くはない。どうにか俺を引かせてやろうと頑張る姿は可愛いと思うぞ」
「なっ!!」
今朝のことはもちろん、レストランに関する無茶ぶりもわざとだと気づかれていたのはわかっていた。
けれど、それをわざわざ口に出されると、自分の幼稚さが身に染みて恥ずかしくなった。
頬を赤らめる私に対し、彼は不意に真剣な顔でこちらを見る。
「率直に聞く。俺じゃ不満か?」
冗談ではない、本気で問うその真っ直ぐな目に、私は息を深く吐き、落ち着いて向き合った。
「……そういうわけじゃ、ない」
「じゃあなにが悪い」
「なにがって……結婚は好きな人としたいって言ったでしょ。それに今はまだ仕事で手いっぱいだし」