クールな社長の溺甘プロポーズ



『それが、イトコの沙羅ちゃんが結婚するらしくてな!まだ先の話だが、結婚式出られるだろう?』

「あー、うん。大丈夫……って待って!沙羅ちゃんって確かまだ20歳じゃなかった!?」

『そうなんだが、恋人が海外転勤になったとかでな。結婚して一緒についてきてほしい、とプロポーズされたんだと!』



20歳にして、プロポーズされて結婚……。

それはまたおめでたいお話だ、と思うと同時に父の次の言葉が想像できてしまう。



「言っておくけど、私はまだ予定ないから」



その言葉を防ぐように自ら先に言うと、電話の向こうからは『うっ』と図星を指されたような声がした。

やっぱり。どうせ沙羅ちゃんの話から、私の結婚話に持っていくつもりだったのだろう。



『まだ、ってその歳になっていつまで言ってるつもりだ!』

「心配しないで。貯金もしてるし保険も入ってるし、一生独身の準備はできてるから」

『そんな準備いらん!!』



勢いよく、余計大きな声になるお父さんに耳がキーンと痛くなる。



『そもそも父さんの会社はどうするつもりだ!?じいちゃんと父さんが二代に渡って経営してきたこの会社を終わらせるつもりか!?』



出た、跡継ぎの話。

子供の頃から何度も、そしてここ数年は会うたびに聞かされている話に、うんざりとした顔になってしまう。


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