【加筆・修正中】恋した君に愛を乞う
「ーーーーという訳で、佐伯さんは僕に付いてもらうので、必然的に社長を担当することになる。では佐伯さん、一言お願いできますか」

「あ……、はい。本日より秘書室勤務となりました佐伯美緒です。分からないことばかりで不安な面はありますが、一日でも早く業務に慣れることができるように頑張ります。宜しくお願いします」

こんなにも歓迎されない空気を感じながら自己紹介をしたのは初めてで、噛まずに挨拶できたということにとりあえずほっとする。

「ありがとう。それではこちらからも紹介させてもらいます。僕は室長の藤堂薫です。社長専属となります。そしてこちらがーーーー」

藤堂さんの話では、現在秘書室には室長の他7名が所属しているが、4名が役員に同行しているため、今ここには3名の方しかいないとのこと。
皆さんの紹介が一通り終わると、この中で一番美人で気の強そうな方、阿川まなみさんが何か物言いたげに藤堂さんに目で訴えていた。

「何かありますか、阿川さん」

「はい。役員数に対して秘書の人数が少なく、皆が日々多忙である状況であるのは室長もご存知かと思います。そんな中で秘書経験はおろか、入社して半年の新人を入れる理由が分かりません。彼女が配属された詳細な理由を教えていただきたいのですが」

気が強そうと予想した通り、阿川さんは口調は強めではないものの、言葉の端々に刺々しい含みを持たせた様子で発言した。
そんな阿川さんに対して藤堂さんは表情一つ変えないまま、ゆっくりと彼女の方へ向き直り目を向けたけれど、その目は冷たく、周囲には妙な緊張感が漂い始める。
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