0.0000034%の奇跡
【溺甘ギャップ〜その②〜】



美容師である僕と歯科医である君。
当然休みの日は被らない。
寂しがりやの二人は当たり前のように
ひとつ屋根の下で暮らすことを選択した。
と言っても僕が転がり込んだわけだけど。



彼女は趣味でギターを弾く。
だから防音されている今のマンションじゃないとダメで、音大の近くに始めから住んでいた。



2LDKのオートロックマンション。
駅も近いから僕も便利だ。
リビングの茶色いソファーが彼女の
お気に入りの場所。
ギターを構えていつも優しい音色で
始まるチューニング。



長い睫毛が揺れて、もうひとつの顔になる時。
僕はまた彼女の世界に惹き込まれていく。



向かい合わせに座る僕を見て優しく微笑む君。
その細い指で奏でる音色はもう趣味の域をはるかに超えてる。
楽器に詳しくない僕でも、使ってるギターは相当良いものなんだろうなって分かっちゃう。







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