ぎゅっと、隣で…… 
 夕食の少し前、玄関のチャイムが鳴り母が返事をしながら扉を開けた。

 何やら話声がしていたが、


「優一、和希、来て!」

 母親の声に、優一と和希は玄関へ向かった。


 そこには、さっき乗用車から飛び降りた隣の家の男の子が元気な笑顔で立っていた。

 その後ろに、うちの親より十歳は若い気がする両親が並んでいる。


 そして……

 母親に隠れるように、あの少女の顔が見えた。



「今日、隣に引っ越しきた崎宮(さきみや)です。仲良くして下さいね」

 優しそうな父親が、優一達に声を掛けて来た。



「六年の優一と、三年の和希です」

 母が僕達を並ばせ紹介した。



「僕は、崎宮(さきみや)翔(しょう)です!」


 翔が、元気にニコリと挨拶してジャンプする。

 嬉しくてしょうがないようだ……


 母親に背中を押され、下を向いていた少女が一歩前に出た。


「南朋(なお)です」

 少女は小さな声で言うと、チラッと優一を見て又下を向いてしまった。



「ごめんなさいね…… 今度三年になるの。集団登校が同じグループなのでよろしくお願いします」

 南朋の母が困ったように南朋を見て言った。


 優一は、春休み前に地区担当の先生に言われた事を思い出した。

 転入生が来るから時間と集合場所を伝えるようにと、班長の優一言ったのだ。


「七時十五分に、公園の前に集合だよ。公園分かる?」

 優一は、南朋に優しく言った。


 南朋は、顏を上げると大きく肯いた。


「ちゃんとお返事しなきゃダメでしょ!」

 母親は、少しキツイ口調で南朋に言った。



「すみませんね。まだ、学校までの道も良く分からないと思うので、連れて行ってやって下さい」

 父親が優しい目で、優一と和希見た。


「はい!」

 優一は、思わず大きな声で返事をしてまった。


 南朋と学校へ一緒に行く事になんだかワクワクしていたのだ。

 男の子達と遊ぶ時とは、ちょっと違う気分だった。
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