ぎゅっと、隣で…… 
 次の日、まだ春休みの優一は和希と一緒に公園へ向かった。

 母親に宿題の事を言われたが出て来てしまった。


 隣の家を見ると、門の隙間から翔が顔を出した。


「お兄ちゃん! 僕も行っていい?」

 翔が、屈託のない笑顔で言ってきた。


「いいよ! お母さんに言っておいで」

 優一は、南朋も一緒に来る事を期待しながら言った。



「うん! ちょっと待ってて!」

 翔は走って、家の中に入って行った。


「家の中、どうなっているのかな?」


 又、和希が門の中を覗くように言った。



 しばらくすると、翔が帽子を被って、母親と玄関から出てきた。


「いいのかしら? 迷惑じゃない?」


「大丈夫です。皆、弟とか連れて来てるから……」


「まあ、そうなの嬉しいわ。よろしくお願いします」



 優一は翔と手を繋いで歩き出した。

 公園は家からでも丸見えだ。

 母親も安心したのだろう。


 振り向くと母親が家に入る姿が見えた。



 優一は、何故だか南朋の事が気になって仕方ない……


「お姉ちゃんは外で遊ばないの?」

 優一は翔に聞いた。


「はずかしがりやさんだから出てこないの。僕を怒る時は大きな声出すのに、外に出ると小っちゃな声になっちゃうんだ……」

 翔は嬉しそうに、飛び跳ねた。


「へえ―。」

 と言って、僕も和希も笑った。



 しばらく公園で遊んでいると、公園の門に寄り掛かり南朋が下を向いて立っている姿が目に入った。

 優一は、慌てて南朋に近付いた。


「どうしたの?」


 優一は優しく声をかけた。


 南朋は黙って、首を大きく横に振ると、逃げるように走り去って行った。
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