ぎゅっと、隣で…… 
「南朋、お客さんだよ」

お婆ちゃんの声に重い体を起した。


一体、休みの日に誰だろう?

友達の少ない南朋には見当もつかない…… 


 不思議に思いながら玄関へと向かった南朋は、思わず体が固まってしまった。



 そこには、南朋が一番会いたく無かった人の姿があった…… 


「ちょっといいかしら?」

 品の良い声だが冷ややかだ……


 高いヒールに、ボディラインがはっきりとしたワンピースが良く似合って、まるでモデルのようだ。


「はい…」

 驚きと緊張のあまり、挨拶どとろか返事をするのがやっとだ……


 南朋は仕方なく靴を履き、玄関の外へ出た。

 家に入れる訳にも行かないし、近くの喫茶店へ入った。



「夕べはきちんとご挨拶もせずにごめんなさい。わたくし植竹小百合と申します。優一の婚約者です。」



 向かいに座った小百合はきっぱりと言った。
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