キミに拾われ、恋して、知って。〜鬼生徒会長と同居はじめます〜
ベランダに繋がる窓を開け、私を抱いたままベランダへ。
外に出ると、夏の夜ならではの生暖かい風が頬を掠めた。
「寒くないか?」
「寒くは……ないけど」
そういえばこの家、高層マンションの上階なんだっけ。
確かに風は強いけど、毛布に包まれているからそれほど寒くは感じない。
熱が上がりきったからか、寒気もさっきほどじゃない。
それにしたって、こんなとこに連れてきて何がしたいの?そう問おうとした時だった。
────ドォンッ!!
破裂するような大きな音と共に、会長の顔が明るい赤に照らされる。
驚いて後ろを振り返れば……。
────ドォンッ!!
「花火……!!」
色とりどりの花火が次から次へと打ち上がり、漆黒の夜空を照らしていた。
花を咲かせたかと思えば消えていくそれは、言葉を失うほど綺麗で儚くて。
一年に一回のこの日のためにめいっぱいの勇気を振りしぼって、大切な人と一緒に過ごしたいという人達の気持ちが、ちょっとだけわかった気がした。
「見られただろ。花火」
「うん。すごく綺麗……」
さっきまでのモヤモヤした気持ちはどこへやら。
穏やかな気持ちで、打ち上がる花火に見とれていたら。
「早くいなくなればいいなんて、思ってるわけないだろ」