星夜光、きみのメランコリー
『…何!? 彩田さんどうしたの…!?』
甲高い声が聞こえて、あたしは朦朧とした意識の中、目を開けた。
『…ッ、彩田さ…っ。とりあえず先生…!保健室の先生呼んできて…!だれか…!』
手首付近の右腕に、ギュウッと大きな力が加わった。
じんじんする。どくどくする。大きく、波打っている。
…でも、なんでだろう。不思議と痛くない。
目の前で必死に動いている影は、今まで廊下の一番端っこでよく見ていた、一度も同じクラスになったことがない女の子だった。
たまたま通りかかったのかな。
白いスポーツバッグ。運動部の子かな。
髪の毛、短いのに可愛いなあ。あたしは、きっとこんなショートヘア、似合わないんだろうな。
…綺麗な色。いろんないのちが、見える。
『彩田さん…!!』
『…』
バタバタと、いくつもの足音が聞こえてきた。
気がつけば、ぼんやりとした視界の中、たくさんの人があたしを覗き込んでいるのが見えて。
それを『近寄るな』と制している先生と、あたしの腕に何枚ものタオルを重ねて、ギュッと体重を乗せている保健室の先生。
…そして、泣きながらそれを手伝うショートヘアの女の子。
その風景をある程度確認したところで、自分がとんでもないことをしたことに気がついた。
『彩田さん、分かる? このまま、病院行くからね』
『……』
“ びょういん ”
その言葉に、まだ少し反応してしまう自分がいたけれど、あたしの世界を否定するために行くわけではないということは分かっていた。
…あたしは、傷つけてしまったんだ。
自分の世界を作り出す、自分の大切な大切な右腕を。