星夜光、きみのメランコリー
・・・
目が覚めると、白い天井が目に入る。
ずっと夢の中にいたけれど、鼻に付く独特な匂いで、今自分がいる場所が病院だということに気がついた。
『ん…』
身体が重い。左手を天井にそらして見たけれど、いつも何気なく使っている右手は石のように重くて、固くて、ピクリとも動かなかった。
指先を動かすことさえもできない。
『…天香……!!』
少し白い爪の先を見つめていると、聞き慣れたアルトの声が飛び込んできた。
重い頭をグググと横に向けると、そこには涙をいっぱいに浮かべたお母さんがいた。となりに、お父さんも。
『天香…!天香、よかった…っ』
『お母さん…?』
何が、“ よかった ” んだろう。そしてあたしは、どうしてこんなところにいるんだろう。
どうして、お母さんは泣いているんだろう。
『天香、ごめんね、ごめんね…』
『…』
唯一動かせる左腕を持って、何度も何度も謝るお母さんを見ていると、少しずつ自分が何をしたのかを思い出していった。
白い包帯でぐるぐる巻きの腕。感覚のない指先。いつもとは明らかに違う様子。
それを見た時に蘇った、はさみの刃の先。
『……』
…あたしは、シバシロさんが持っていたはさみで、自分の腕を…。
『…天香、あなた、自分が何をしてここにいるか分かってる…?』
『……』
『…さっき、手術をしたのよ。あなた、自分で自分の……腕を……』
『…分かってる』
そんなに、言いにくそうに話さなくても大丈夫なのに。
だってこれは、あたしの意志だ。今は冷静だし、なんてことをしたんだろうって思いもないわけじゃないけれど、自分がそうしたくてやった。
たとえ一瞬の出来事であったとしても、あの時の自分を責めようとは思わない。