星夜光、きみのメランコリー
しばらくして落ち着いたら、お医者さんが来てあたしの様子について話してくれた。
あたしが自分でつけた傷は、あたしが思っているよりも深くて、近くの神経まで傷つけてしまっていたこと。
当時は出血も多くて、本当に中学生の女の子が自分で傷つけた傷なのかと思ったほど大きなケガだったということ。
…そして、学校で何かあって辛いなら、カウンセリングを受けてみたらいいんじゃないか、ということ。
『君の腕はね、今までのように動かすのは、もしかしたら難しいかもしれないんだよ。リハビリはやれるだけ、やるんだけども』
『…』
『…リハビリをやりながら、カウンセリングを受けることもおすすめするよ。』
『……』
…だから、そんな風に申し訳なさそうに言わなくていいって。
そう、くちびるの近くまで出かかった言葉を、そのままごくんと飲み込んだ。
これは、あたしの意志だ。
あの時、あたしは確かに自分の世界のことが憎くなった。こんな風に生まれてこなければ、あたしは苦しまなかったのにとさえ、思った。
だから傷つけた。
積もりに積もった感情が、行き場を失ってしまった思いが、あたしの世界が、限界まで苦しんだ結果がこれだったのだ。
…世界をつくりだす右腕を、必要ないと思ってしまった。
でも、これだって全部、あたしの世界だ。あたしの心だ。あたしは、正直に動いただけなんだ。
だから、カウンセリングなんて必要ない。
“ 変な人 ” だと思わないでほしい。
これがあたしの世界なのだから、間違っていると思わないでほしい。
…この右腕は、ある意味、あたしの世界が存在する事を証明している。
そんな風にさえ、感じたんだ。この時は。
『…そんなこと、やりたくないんです。右腕も、このままでいいんです…』
消毒液くさい部屋で、あたしは先生からもお母さんからも目を背けて、ただその白い世界に溶け込んだ。
こころが分かりづらい色。
だからこそ、見慣れない場所でも、あたしは少し、安心できていたんだと思う。