星夜光、きみのメランコリー
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入院2日目。この日はひどく空が眩しい天気の良い日だった。
でも、それはテレビで見たニュースで言っていたから分かっていることで、あたしはずっと部屋のカーテンを閉め切っていた。
太陽の周りに浮かび上がっている光をつくる色や、眩しい青空を待っている色を見たくなかった。
だから、極力見ないようにしていた。
…そんな時、コンコンとドアの固い音が部屋に静かに響く。
お昼ご飯も食べて、お母さんも家に一度戻ったばかりの時だったから、誰が来たのか皆目見当もつかなかった。
『……はい』
それでも、その音を聞き入れて、カラカラと静かに開いていく入り口を見ていた。
ドアの隙間から、新しい済んだ空気と一緒に入って来たのは、いつかに見た茶色のショートヘア。
『……彩田さん、いる?』
『……』
声を潜めている。静かに部屋に響いたその音は、あたしの記憶の片隅を刺激した。
『…あ、彩田さんだ』
『…!』
白いスポーツバッグ。はっきりとした顔立ち。まだ、一度もしっかりと話したことのない人。
…覚えている。この人は、昨日、あたしを助けてくれた人。
何度も何度もあたしの名前を呼んで、この腕を守ろうとしてくれた人。
『…突然ごめんね。あたし、浅木千種っていうの』
…知っている。クラスは一度だって同じになったことはなかったけれど、みんなの人気者だから、顔と名前くらいはなんとなく覚えていた。
『彩田さんが、昨日倒れててさ、びっくりしたし、ここに来ようかすごく迷ったんだけど…』
『…』
『…でも、どうだったかなって、今日もずっと気になっちゃったから、やっぱり来ちゃった』
後々、大の親友になってくれた千種は、この時少し困ったように笑った。
この日は、土曜日だった。学校はお休みだったのに、午前中の部活でも気になって仕方なかったから、今日わざわざ病院まで足を運んでくれたらしい。
まゆげは下がっているけれど、その笑顔と言葉に、嘘は見られなかった。それが、あたしは素直にうれしかったんだ。
『……、千種ちゃん』
初めて名前を呼んだ時、心臓の奥の方が、くすぐったかった。
『ふ。千種でいいよ。あたしも、天香って呼んでいい?』
『うん、いいよ』
千種の笑顔は、固まっていた心を溶かしてくれた。特に、何を話したわけでもないのに。
千種は、あたしがいちばん苦しんだ場面に遭った。生きるか死ぬか、そんな境目に一緒に立たされた不幸な女の子。
それなのに、千種はそれに触れることもなく、責めることもなく、そのまま何気ない話をしてくれていたんだ。