星夜光、きみのメランコリー
千種が、あたしの世界のことを知ったのは、それから少し後のこと。
学校をしばらく休んでいたあたしが、久しぶりに登校した時の放課後、一緒に近くのファミレスに行った時に千種から聞かれた。
『…これから天香と仲良くしていけたらいいなって、強く思ってるから、あたし。だから、天香のことも、少しずつ教えて欲しいんだ』
メロンソーダの上に乗ったアイスを、スプーンで沈めながら千種は言った。少し、言いづらそうに。
その頃のあたしの腕は、まだ全然思うように動かなくて、痺れも取れないし、シャープペンシルも握れなかったけれど、気持ち的には少しスッキリして、ある程度は前向きに生きていけていたと思う。
だから聞き入れられたっていうのもあるかもしれないけれど、なんと言ったって、千種はあたしの命の恩人だから。
そんなことを言うと、“ 大げさだよ ” と言われるのだろうけど、それは今でもずっと思っている。
『…千種、あたしね…、』
夕焼けの光と色が差し込む、ひんやりと冷えたファミレスで、あたしは千種に自分の住んでいる世界について話した。
受け入れてもらえないことを、覚悟して。
それでも、心のどこかで分かって欲しいと思いながら。
話しながら周りを見渡すと、やっぱりそこらじゅうに色は生きていて、少し意識を向けるとあたしに話しかけて来た。
その度に、千種から視線がずれてしまったけれど、それにも動じず、千種はあたしの世界について理解しようとしてくれた。
何度だって聞いてくれた。分からないことは、細かいところまで質問してくれた。
その時の、バカにもしない、驚きもしない、淡々とあたしに話しかける千種を見ていると、もっと早くにこの女の子と出会いたかったと思ってしまったんだ。
散々話して、時々泣きそうになって、でもグッと堪えて、夕焼けが空の下の方に沈んでいった頃、千種はすべてに納得したように、ぐんと伸びをした。
そして、言ったんだ。
「天香しか感じられない世界なんて、羨まし過ぎない?」
そう言って笑った彼女の笑顔を、あたしは今でも忘れていない。