星夜光、きみのメランコリー
・・・
長い長い昔話の世界に入り込んでいたあたしは、ヘーゼル色のガラス玉のような光に導かれてもとの世界へ戻って来た。
指を絡めているあたしの前で、頬杖をついたままじっとあたしを見ている千歳くんは、もう長いことその体勢をとっていたらしい。
「手ェ痺れた」と、少し顔を歪ませている。
…あたしの、秘密を話してしまった。いちばん暗い部分を。隠していた傷を。
もう、誰かに話すことはないと思っていたんだけど、千歳くんがあまりにも自分の世界をかなしいと言うから、そんなことないと伝えてあげたかったんだと思う。
「…千歳くん、ごめんね」
もう、どのくらい話していたんだろう。きっと長々しいって思われちゃったんだろうな。ごめんなさい、千歳くん。
なんとなく目を合わせることができなくて、視線を下に向けたまま絡まった指を見ていた。
でも、千歳くんはそんなあたしをよそに、つま先であたしのつま先を蹴りながら、フゥと息をつく。
「なんで謝んの? 天香の話じゃん」
「…」
「お前が話したいと思ったから、話したんじゃないの?」
頭の上に、熱い手のひらが乗った。2、3回バウンドさせて、その熱は離れていく。
千歳くんはいつも面倒くさそうに話すけど、とってもやさしい人だ。
言葉のひとつひとつがあたしに向けられているのが分かる。きっとなんとなく話しているんだろうけど、その言葉を聞くと安心する。
千歳くんは、すごい。
「引いた?」
「引かねーよ」
「なんでもないこと?」
「…なんでもなくは、ないけど」
あ、今の言葉は、千歳くんを困らせちゃったな。反省。
「…ねぇ、ちょっと外に行こ。飲み物買うの付き合ってよ」
「えっ…? う、うん」
ガタンと机を引きずる音がして、千歳くんはヨイショと立ち上がる。
あたしの話、本当になんでもないことだったのかもしれない。もう飲み物の話に移り変わってしまった。
じゃあ深く掘り下げて欲しかったのかと言われると、そうでもないんだけれど。