星夜光、きみのメランコリー
玄関を出て、部活をしている人たちが溢れかえる中を歩いていく。
まだまだ明るい空は、これからやってくる暑い季節を思い出させてくれる。もうすぐ、夏がやってくる。
サッカー部の砂を蹴る音、野球部のバットにボールが擦れる音、テニス部のラケットに当たる鋭い音。
そんな何気ない、毎日耳から入ってくる音が、鼻から入ってくる初夏のにおいが、空に集まる色たちと融合していく。
この季節、あたしはきらいじゃない。
薄い白いシャツを膝まで捲った千歳くんの後ろ姿を眺めていると、案外背が高いことが分かる。
いつも思ってることだけど、いつも感じてしまうんだ。
千歳くんは、男の子。
「…あつ。もう夏だね」
整った眉を潜めながら、こちらを振り向いた。
ヘーゼル色の瞳が、星の色のような髪の毛が、まわりの色たちと混ざり合う。
きれい。見惚れちゃう。千歳くんの、ぜんぶがきれい。
「ねぇ、天香」
「は、はい」
「…何びっくりしてんの。あのさ、今日、進路調査の紙配られてたじゃん」
「あー…」
あの、紙のことか。
「あれ、天香はなんて書くの?もう決めてたりするわけ?」
さっき、千種と同じこと話したな。
「ううん。まだ全然、決めてなくて」
「そっか」
「千歳くんは、決めた?」
「……いや、俺は」
お互い、絵のことには触れないね。というか、触れられない感じがする。この間はあんなに自分のことを自分から話せたのに。
千歳くんは、どうするんだろう。
絵を描きたいって、思わないのかな。
これから本格的に学びたいって。その世界に入りたいって。