星夜光、きみのメランコリー


玄関を出て、部活をしている人たちが溢れかえる中を歩いていく。

まだまだ明るい空は、これからやってくる暑い季節を思い出させてくれる。もうすぐ、夏がやってくる。


サッカー部の砂を蹴る音、野球部のバットにボールが擦れる音、テニス部のラケットに当たる鋭い音。

そんな何気ない、毎日耳から入ってくる音が、鼻から入ってくる初夏のにおいが、空に集まる色たちと融合していく。


この季節、あたしはきらいじゃない。


薄い白いシャツを膝まで捲った千歳くんの後ろ姿を眺めていると、案外背が高いことが分かる。

いつも思ってることだけど、いつも感じてしまうんだ。

千歳くんは、男の子。


「…あつ。もう夏だね」


整った眉を潜めながら、こちらを振り向いた。
ヘーゼル色の瞳が、星の色のような髪の毛が、まわりの色たちと混ざり合う。

きれい。見惚れちゃう。千歳くんの、ぜんぶがきれい。


「ねぇ、天香」

「は、はい」

「…何びっくりしてんの。あのさ、今日、進路調査の紙配られてたじゃん」

「あー…」


あの、紙のことか。


「あれ、天香はなんて書くの?もう決めてたりするわけ?」


さっき、千種と同じこと話したな。


「ううん。まだ全然、決めてなくて」

「そっか」

「千歳くんは、決めた?」

「……いや、俺は」


お互い、絵のことには触れないね。というか、触れられない感じがする。この間はあんなに自分のことを自分から話せたのに。

千歳くんは、どうするんだろう。

絵を描きたいって、思わないのかな。
これから本格的に学びたいって。その世界に入りたいって。


< 122 / 140 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop