星夜光、きみのメランコリー
返却口の近くにある、丸椅子を持ってきて座った。
なんとなく、彼の姿をもう少し見ていたい気がした。
「…なに、仕事の邪魔をする気ですか」
「違うよう。暇だからサ」
「俺は忙しいんだけど?」
「はいはい!そんなこと言って、テーブルの上にスケッチブックと鉛筆が見えますぜ!ダンナ!」
「…図書室では静かにしてください」
少し下がった、見えづらい場所に置いてあった一色くんの友達。それをビシッと指差すと、彼の迷惑そうな顔がこちらを向いた。
はぁ、と長いため息をつかれる。再び動かしていた指は、しばらく忙しく動いた後に、パチっという音を立てて静かになった。
「…彩田さんってさ、」
「うん?」
「最近、よく俺の前に現れるよね」
ガタッと椅子を動かして、パソコンの方に向けられていた身体は、180度回転して、あたしの方を向く。
向かい合わせになったあたしたち。一色くんは、少し呆れた顔でこちらを見て、「こっちに来なよ」と言った。
返却台を挟んでいては、誰かが来た時に邪魔だからと、一色くんは隣をポンポンと叩く。丸椅子を持って近づいて、彼の隣に腰を下ろした。
…うおお、またまた王子とお近づきに。
この間が特別な日だと思っていたけど、そうでもないみたい。一色くんとは、確実に距離が近くなっている。そんな気がする。
「彩田さん、帰らなくていーの?」
「ううん、別に用事はないよ。友だちも部活行っちゃったしさ」
「ふーん、俺と同じだね」
「えっ?どのあたり?」
「友だちが部活に行って暇なあたり」
俺は仕事もなすりつけられちゃったけど。
一色くんはそう言って薄く笑っていた。
白い歯が溢れるように笑う。彼を作るひとつひとつが、見たこともないくらいにきれいだと思った。