星夜光、きみのメランコリー
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図書室は静かだった。受験勉強をしている1つ上の先輩たちを見ながら、返却口へ向かう。
その途中で他の本たちを前にして、何度か立ち止まっては手に取るを繰り返していると、気がついたら15分も時間が過ぎていた。
陽の当たりにくい図書室に、ようやく教室で見た色たちが届いた頃、あたしもようやく返却口まで辿り着いた。
「…あの、返却をしたいんですけど」
鞄の中から、ゴソゴソと本を取り出す。あった、と目の前に座っている図書委員に差し出すと、その代わりに低い声が返ってきた。
「…返却時間、ギリギリじゃん」
「……」
普段、委員会の人の顔なんて確認しない。なんとなく渡して、なんとなくカードを書いて済ませるだけ。
だから、今日も気づかないでいた。そのまま帰るところだった。
「…一色くん」
嘘みたいだった。通い慣れたその場に、彼がいることが驚いた。
あたしの呟きにも動じず、ピピッとバーコードを読み取りながら手続きを済ませる一色くん。
手慣れたもんだ。いつからここにいたんだろう。前から、図書委員やっていたっけ。
…ううん、だったら、さすがのあたしだって、気づくはず。
「…はい手続き済んだよ。カード返す」
「……」
ハンコを押してもらうところには、“ 美作(みまさか)” の文字。
みまさか?これって、一色くんの名字じゃない。別の人の名前だ。でも、どうして。
「友だちの代わりに出てんの。なんかどーしても部活に出なきゃいけないんだって」
じっとカードを見つめていると、一色くんはめんどくさそうにそう呟いた。パソコンをカタカタと触っている手先は慣れっこのように動く。
何度も、ここの席に座ったことがあるというように。
「一色くん、あたしの言いたいことよく分かったね」
「分かるよ。彩田さん、分かりやすいからね」
「…ふうん」
…王子と、最近よく遭遇する。知り合った瞬間にこんなにもチャンスが巡ってくるなんて、人生ってよくできているもんだ。